そこは湯治施設を備えた山奥の宿。
近くまで行けば必ず寄るほどのお
気に入りだ。
いつもの様にのんびりと湯に浸かっ
ていた。 僕の他には、訛りのきつい
婆が2人と爺が一人、中年の男性が
一人。浴室にはちょっと大き目の
爺婆の話し声が響いていた。
そこに突如現れた妙齢の女性。
なにぶん狭い浴室。凝視は出来
なかったが、30代半ばだろうか
髪をアップに留めているせいか、
和服の似合いそうな雰囲気。
肌は透き通るように白く、細身で
ありながら腰周りの肉感は充分な
色香を漂わす。
とは言ってみたものの、実際のところは、反射的に目を逸らしてしまっていて、 実質見ていたのはコンマ数秒。
ただドキドキしながら俯いてしまった。
俯きながらも視界の上端では彼女の
動きを察知している。
するとなんと!ほぼ僕の正面で
しゃがみこみ、桶を手に取り掛け湯
を始めた。 それまで体の前に当てて
いたハンドタオルは浴槽の脇に置いている。
浴槽が掘り下げられた構造だから、
僕の目の高さは、まさに股間。
え〜〜〜!?そういう趣味の人
??? とか思いつつも、やはり
こういう場ではマナーが大事。
僕は顔を伏せたまま、湯面をじっと
見ていた。
やがて彼女は、長く丁寧な掛け湯を
終えると、片足ずつ浴槽に入って
きた。 僕はこれからの展開をあれや
これやと妄想… …する余裕などある
はずもなく、
驚愕の事件はその時起こった
彼女は肩まで浸かると、すいーっと
僕の方に体を寄せてきた。 とても
優しい表情で、微笑んでいる。
その流れのまま僕の肩に手を伸ばし、
目の前を滑るように横切ると、
僕の隣に並んで 座った。
な、何が起こっている?
事態が飲み込めず、僕は固まる。
僕は少し伸ばし気味の体育座りの
ようにして座っていた。 その足を
彼女は体をこするように、滑るよう
に越えて行った。
その時の、柔らかく、そして滑らかな
肌の感触が激しく脳内で反復する。
興奮はただならぬ事になっていた。
…と、ほぼ同時に。
「オイ、こっちだよ。」と中年男性。
反射的に男性を見やる。 こっちを
向いた男性の視線は僕を通り越して、
彼女に。
視線を彼女に向ける。 彼女は目を
細め、僕の鼻先ほんの5センチの
ところで、不安げに僕の顔を凝視
してい る。 そうしていながらも、
二人の体は密着していた。
その時にはもう大体の顛末を頭では
理解していた。 されど、どうする
ことも出来ない僕。
彼女は驚くでも慌てるでもなく、 「あ〜、やだ〜、間違えちゃったぁ」
「すみませ〜ん」 と言いつつ、
またもや僕の足の上を滑るようにして、
男性の脇に移動していった。
今度は乳首や下の毛の感触まで分か
った気がした。
そう。2人はご夫婦だった。 単身赴任
中のご主人の下にやって来がてら温泉
巡りをしていると言う。 そして彼女は、
コンマゼロいくつという近視。
その上、立ち込めた湯気で、一番端
にいたご主人に気付かなかったそうだ。
「全く、おっちょこちょいだなぁ。」
ご主人は、これまた優しい面差しながら
も嗜めるように言う。
「えへっ、全然見えないんだもん。」
恥ずかしそうに、照れくさそうに、
彼女は笑う。
そんな2人を僕は呆然と見ている
「しょうがないな。ほら、ちゃんと
お詫びして。」 もうこんなのは慣れ
っこと言うような落ち着きぶりで礼を
促す。
「すみませ〜ん」 恐らく見えていない
だろうに、僕を見やり、ペコっと頭を
下げる奥さん。
「なんかホント、すみません。」
重ねてご主人も頭を下げる。
「い〜え」位にしておけば良かったの
だろう。 でも、僕の口から出たのは…
「いえ、なんかこちらこそ、すみません。」
だった。
正直すぎた…
その後、ご夫婦とは会話が弾み、
3人で移動しながらお湯を楽しんだ。
彼女は近視のせいなのか、そもそも体
を隠す気があまりないらしく、 僕は
目のやり場に困りながらも、充分に目に
焼き付けてしまった。
「またお会いする事があれば…。」と
いって宿の前で別れたが、 もう二度
と会わないだろう。
- 2015/09/26(土) 20:40:07|
- ゲストの方の混浴体験談
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0